心地いい暮らしを送るスペシャリストたちVol.8 皮膚科・美容皮膚科医 山崎まいこさん
心地いい暮らしを送るスペシャリストたち 2022.06.24
今回のゲストは、『まいこホリスティックスキンクリニック』院長の山崎まいこさん。医師としての信念や日常生活の中で心掛けている心地いい習慣を教えていただきました。
医師を目指すきっかけとなったことから教えてください。
すごく印象的な出来事があったわけではないのですが、小学校1年生の作文には「医者になりたい」って書いていました。
その頃は救命救急のドキュメンタリー番組や海外ドラマの『ER 緊急救命室』を観るのが好きで、国境なき医師団に憧れていたところもあり、そういった中で「絶対、医者になりたい!」と思うようになっていました。
皮膚科を専門にされていますが、はじめから考えていたことでしたか?
当初は、救命救急や心臓疾患と向き合う外科医を考えていたので、研修先には形成外科を選びました。皮膚移植やガン手術後の再建などをメインにやっていきたかったものの、本当にハードだったんです。
週に3回しか家に帰れないような状況で、これをずっと続けていくのは難しいと考えて皮膚科に転科しました。ただ皮膚科は皮膚科で、例えば、アトピーがひどい場合、薬を使って抑えることはできても根本的には治せない。アトピーは肌の表面的なことであっても、身体の内側もかかわっていると感じていて、患者さんともっと向き合いながら治療がしたくても流れ作業のようになっていることに違和感を覚えるようになりました。
皮膚科に限らず、適当とういうかサクッと対応された経験がある人は多いように思います。
そうですよね……。患者さんひとりひとりの話をゆっくり聞こうと思うと、勤務医の体制では難しいところがあります。もともと開業する予定があったわけではなかったのですが、患者さんときちんと向き合う体制を作るためには必要なことでした。
開業を決めたことがホリスティック治療につながっていったんですか?
そうですね。ホリスティックはボディ・マインド・スピリットと言われます。肌を治療するにしても、肌だけを見るのではなく、生活習慣や気持ちなど、すべてはつながっている。そのことを踏まえて、私の中のホリスティックの考え方では、寛容と中庸というのを大事にしています。
寛容と中庸について具体的に教えてください。
寛容は、自分とは異なる意見や価値観を拒絶せず、広い心を持って受け入れること、欠点などを攻めることをしないこと。自分自身にも、他者にも寛容さを持つことは本当に大事だと思っています。
そして、中庸に関しては、どんな立場であっても、例えば、治療していく過程であっても、自分がやっている方法だけがいいというのはあり得ないと思っています。お薬以外は否定することや逆にお薬は絶対に使わないという考えを持っている人もいると思いますが、他者に強要するとか、どんなにいいとされていることでもそこに強制が入ることには違和感があります。
それぞれいいところがあり、善悪だけではなく相性もありますよね。皮膚炎を治療するにしても何を取り入れていくのかは、患者さんのマインドやライフスタイルに合わせて選択していく。あるいは選ぶ手助けをしていくことが、私が考えるホリスティック医です。そのためにいろんなアンテナを張って、いいものを取り入れていくのが私の使命なのかなと思っています。
同じ医師であっても意見が違って、中には批判があったりもして、中庸的に判断してもらえる機会は少ない印象があります。
そうですね。自分の意見を持ちつつ、他者を受け入れることができるかどうかは、医学界に限らず、生きていくうえですごく大事になっていると思います。
だから患者さんの心情は出来るだけ尊重することも必要。お肉を食べたほうがいいと思う場合でも、「ベジタリアンでいきたいんです」という考えのある患者さんならば、寄り添った形で何か提案できないかなと考えたり。お薬を使いたくない場合には、ギリギリまでお薬は使わない形で寄り添い、医師としてここは使ったほうがいいと判断した時にはきちんと話をすることもあります。
寛容と中庸は、どんな仕事をしていても、人として持っていたいことですね。ただ、いろんな考えや意見がある時代だからこそ、難しい側面もある気がします。
そうですね。孤独に打ち勝たないと難しいかもしれないです。
私が気をつけているのは、あまりグループに所属しないことです。所属すると安心感はありますけど、その時点で対立構造が生まれてしまっていると思うんです。もちろん対立構造が生まれないグループ形成は出来ると思うんですけど、現実的に出来ているところは本当に少ない印象があります。
ドクターの中でも、学会や社団法人ができたりするのですが、すべてのことから中庸でいようと思っているので属さないようにしています。私自身もまだまだ未熟ではありますが、軸が本当にしっかりしていないと揺らいじゃいますし、孤独を感じることもあるので、打ち勝っていくことも必要なのかなと思っています。
気持ちの持ちようも健康や美容につながってくると思うのでバランスが大切になるのかなと思うのですが、どのように保っていますか?
筋トレみたいなことだと思っているんです。今日1日は中庸でいられたけど、明日はそうじゃないかもしれないし、いろんなことが起こるので、日々の中で選択をする時に心掛けたりしています。その積み重ねによってバランスが保てるようになってくるのかなって。
きちんと自覚していくってことですか?
はい、そうです。特に怒りやイライラが出てきた時はバランスを崩しているから、「何に対してイライラを感じているんだろう」と自己分析して、自分の感情と向き合う意識を持つこともしています
確かに、何か起きた時は気づきやすくなりますよね。
はい、気づきやすいと思います。あともうひとつは、自分の機嫌を自分で取れるかどうかだと思います。
そのためには自分の好きなものをきちんと分かっておく。ただ、一般的にいいとされているものが好きではないこともあると思うんです。例えば、ヨガがいいと言われても苦手な人もいますよね。だから、誰に言うでもなく、本当に自分が心地いいと思うこと、しっくりくること。他者の目線を一切排除して、自分が心地いいと思えるかどうかってことを分かっていると揺らぎかけても戻すことができます。
こういう話をすると、「甘いものを食べるのが好きだけど身体には悪そう。それでもいいんですか?」と言われることもありますが、大切なのは、甘いものを食べたいという欲求よりも心地よさを考えることです。甘いものを食べすぎないほうがいいと思っているのに食べている状況は、食べたいという欲求は満たされているけど、どこか罪悪感があって心地いい状態ではないと思うんです。欲求と心地よさは混同しがちですが、きちんと分けて考えることが大切だと思います。
先生が日常生活の中でやっている心地いいことは何ですか?
食生活で気が付いたことがあります。コンビニのごはんは苦手ですが、日常的に行くことができる定食屋や居酒屋などで外食することは好き。「この違いは何だろう……」と思った時に、「人の手によって作られているかどうかなのかも!」と。
機械を使って流れ作業で作られているごはんは苦手で、作り手がいて想いが込められている食事は好きなんだと思ったので、自炊以外の時はそこを意識して選ぶようにしています。なるべく添加物を食べないようにすることも気をつけていますが、例えば、冷凍食品を使っていてもお母さんが作ってくれたお弁当はいいような気がしていて。そこに愛は込められていますよね。
では、美容に関しては意識していることはどんなことになりますか?
美容に関しては、なるべく睡眠時間が確保できるようにスケジュールを組み立てるなど、睡眠を大事にしています。あとは、紫外線対策と乾燥対策は意識しています。
具体的には、日焼け止めの塗り直しをこまめに行い、季節にもよりますが、特に真冬は、日中の保湿の回数も増やしています。自分の肌状態を見ながら行うことが大切です。
栄養面では、たんぱく質や良質な油の摂取量が減らないように気をつけていますし、先ほどの睡眠を大切にしていることにもつながりますが、寝る前に高濃度のティンクチャーを飲んでから寝ていたりもしています。
ホリスティックの視点で考えるとCBDはどんな役割がありますか?
自然界のものを取り入れるという意味では、ハーブと同じ視点だと思っています。作用に関してはすごくマルチなので、お薬を使いたくないという人にもなじみがいいと思っているので、CBDそのものがホリスティックかなって気もしていて。
例えば、頭痛や眠りに対して使ってもらうことが多いですし、緊張しやすい場合は、日中の緊張感を緩めるにおすすめすることもあります。痛みへの受容体にもいいので、生理痛など、何かしらの痛みがある人に使ってもらうことも。
ひとつのアイテムでこれだけマルチに使えるのは、まさにホリスティックですよね。
嬉しい限りです!これからのことも伺いたいのですが、どんな未来を思い描いていますか?
AIで診断できない医療を提供していくのが私の目指すところです。私が一番大事にしているのは、「この患者さんにはお薬が必要なのかな、サプリかな、マインド的な話なのかもしれない。いや、もしかしたらハグが必要なのかな」っていう。
まさかのハグ⁉治療の中でハグをすることもあるんですね。
はい、患者さんと向き合う中で何名かにハグをしたことがあります。ハグすると涙を流す人もいるんですよ。
実は私自身もある方にハグをしてもらったら、メンタルが弱っていたわけではないのに急に涙が出てきたことがあって。その方はハグの練習をしたっておしゃってたんです。だから、ハグひとつとっても癒しになるし、それは人にしかできないことですよね。
今後も、人たらしめる所以をもっと使って生きていきたいと思っていますし、批判し合う医療ではなく、受容し合う人々と医療をしていきたいという夢はあります。
PROFILE
山崎まいこさん
まいこ ホリスティック スキン クリニック 院長。皮膚科医。勤務医として形成外科医、皮膚科医、美容皮膚科医として務め、2017年東京・代官山にクリニックを開業。
ホリスティックな視点から、外側の治療だけでなく、身体の内側、腸内の健康、心のあり方までサポートし、真の健康と美しさを追求している。オーダーメイドで患者に寄り添う医療には定評があり、各界著名人やビューティー関係者からの信頼も厚い。
様々なアイテムの揃うECサイト「まいこホリスティックオンライン」の監修も務める。
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