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スペシャルインタビューVol.5 医師 岩本麻奈さん 後編

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スペシャルインタビューVol.5 医師 岩本麻奈さん 後編

心地いい暮らしを送るスペシャリストたち 2022.05.02

第5回目となるスペシャルインタビュー。一般社団法人・日本コスメティック協会名誉理事長であり、皮膚科専門医の岩本麻奈先生のインタビューをお届けしています。後編では、今すぐ実践したい良質の睡眠につながる入浴法と、睡眠美容にも取り入れられている再生医療について、教えていただきました。

質のいい睡眠につながる、お風呂の入り方を教えてください!

快眠とは「快い寝つきの熟睡と爽やかな目覚め」のこと。そんな眠りを引き寄せるのが就寝前の入浴です。お風呂に入る大きな目的の一つは血流の促進にあります。湯船に浸かれば身体が温まって血流が促されます。ポイントは、重炭酸温浴の活用による効率のアップ。
重炭酸温浴とは、重炭酸イオン入りのタブレットを浴槽にプラスした入浴のことです。重炭酸イオンが血管の内側に入ると、上皮細胞からNO(一酸化窒素)が産出されて身体は酸素が足りない状態であると錯覚します。すると、血管が拡張して血液を末梢まで行き届かせる作用が活発になるというわけです。
血管拡張作用は硫黄泉にもみられますが、自宅での硫黄泉となるとハードルは高い。重炭酸風呂を作れる入浴剤はお手軽です。ご活用をおすすめします。炭酸ガス入り入浴剤とは別の種類なので、必ず「重炭酸タブレット」をご使用ください。

湯船に浸かるのは何分くらいがいいでしょうか?

最低15分はお願いします。大事なことは「40℃以下のぬるま湯」です。重炭酸イオンは高温よりもぬるま湯によく溶け込みます。15分は浸かることで、深部体温が上がって血流促進の底上げにつながります。
深部体温は入眠にも関与しています。深部体温が急速に冷えていく状態は、安らかでスムーズな入眠を表しています。寝室は少し寒いくらいがちょうどよく、汗ダクダクの状態では眠れません。ガマンできない熱帯夜は、一晩中エアコンをつけていてもいいのです。
入浴によって上昇した体温が元に戻って、下降に転じるまでの時間は約90分ほどです。逆算すれば、寝に入る(寝つき)時間の60~90分前までに、お風呂から上がっておくようにするのがいいと言えます。

なるほど、そういうことですね。次は、先生が構想されていらっしゃる睡眠美容の将来イメージについて教えてください。再生医療と組み合わせた治療を提唱されていると伺いました。

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再生医療とはひとつの医学分野の名称です。身体の組織が欠損した場合に、人間が持っている自己修復力を引き出して、機能を回復させようとするものです。外から何かを与えたりするのではなく、本来的に備わっている細胞の力を復活させることなので、再生医療は実はナチュラルな方法なのです。たまたま睡眠美容を取り入れているクリニックが、再生医療メインであることもあり、私が診療する際にご提案することもあります。ただ、まだ一般的な方法ではないと考えています。

難しく考えてしまうのですが、再生医療はシンプルなのですね。具体的にはどんな方法があるのでしょうか?

幹細胞(ステムセル)とは、自己複製能力とともに様々の細胞に分化する能力を持っている、特別な細胞です。幹細胞は若い頃なら何億となるのですが若い頃なら何億とあるのですが、30代あたりから年々減少します。誰だって年齢を重ねていくと、不調は増えていきますよね。それは修復する細胞自体が減少するからです。数少ない細胞で数多くの不調を対応するのは無理があります。再生医療治療は、幹細胞を補填して底辺を広げ、さらには底力をアップしていくイメージです。究極のリバースエイジングと言えます。
幹細胞を用いた再生医療を受けた患者さんたちが、最初に話される実感は、「よく眠れるようになった」ということなのです。

最新再生医療でも、眠りから改善していくのですね。

世界的に見ても、日本の再生医療の臨床症例数は群を抜いてます。きっと、これからどんどん進歩していく分野となります。
すべての方に、ご自分の細胞を使った再生医療を提案しようと、思っているのではありません。なんと言っても先端医療費は高額です。ただ、手軽に受けられる再生医療と言える幹細胞培養上清液点滴があります。他人の幹細胞を培養する際に出る栄養分を収集して身体に入れるのです。成長因子を自ら生産する細胞ではないとしても、豊かな栄養分が供給されます。
大切なのは、患者さんひとりひとりのご希望と条件にフィットした適切なアドバイスを行うことだと思っています。「なかなか眠れない」の悩みを同じでも、個性であるライフスタイルや性格は違っています。私自身、医療は「個」と向き合うものであるべきだと考えています。

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睡眠美容外来専用の問診表と用意しているのもそのためです。問診票を等して、睡眠にまつわること、身体に現れている気になる症状、ライフスタイルなど、幅広くいろいろなことをヒアリングさせていただいています。きちんとお話をお伺いし、血液検査が必要であれば行い、点滴やCBDが必要であれば処方をいたします。ただその前にまずは「お風呂の入り方を変えてみてください」「太陽の光に当たって、よくエクササイズもしてください」と、ライフスタイルの改善を一番初めにお伝えしております。栄養指導も欠かしません。
どうしてもできそうにないことや、コスト的に無理が生じてしまうことをご提案しても、なんの意味もありません。であればこそ、円滑なコミュニケーションによる相互信頼の確立を図り、お一人おひとりに適した治療を心掛けています。

病院やクリニックはどこか事務的な雰囲気がありそうに思いますが、岩本先生のお話を伺っていると、そうではないと感じました。

長いフランス生活で培われたスタイルかもしれません(笑)。私自身、話をするのが好きで、つい身が入ってしまいます。カウンセリングに時間がかかるというか、時にカウンセリングのみで悩みが解消してしまったりして!
ただ、きちんと信頼関係が築けたらすごく嬉しいです。それはつまり、悩んでいらっしゃったことが改善していくということ。「2週間後に改めて来てくださいね」とお伝えしたけど、2週間経ってもいらっしゃらないと思ったら、「すっかりよくなりました!」と。一報の後で、その方のご紹介でクリニックを訪れる方も多いのですよ。
また、中国在住の方が、メッセージアプリの『WeChat』で現地から通訳付きの受診をされることもあります。それくらい深刻な悩みを、受け止めているという覚悟を持っていなくっちゃいけないと思います。なにはともあれ、すべてはしっかりとしたコミュニケーションからですね。

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PROFILE
岩本麻奈さん
一般社団法人・日本コスメティック協会名誉理事長、皮膚科専門医。慶應病院や済生会中央病院などで臨床経験を積み、1997年に渡仏し、在外生活20年以上にわたる生活で美容皮膚科学、自然医学、抗老化医学などを学ぶ。コロナ禍で帰国し、現在、ナチュラルハーモニークリニック表参道、グランプロクリニック銀座では、睡眠美容外来を設立。また、さまざまメディアを通して美容情報を発信している。近著は『睡眠美容のすすめ』(西村書店)。

ナチュラルハーモニークリニック表参道:https://natucli.com/
グランプロクリニック銀座:https://granpro-clinic.com/