心地いい暮らしを送るスペシャリストたちVol.11 佐野正行さん
心地いい暮らしを送るスペシャリストたち 2022.08.22
健康意識を持った人が増えていると思うのですが、どのように感じていますか?
最近は健康になることが目的になっている人が多い気がします。例えば、野菜だけを食べるベジタリアンであることにこだわりすぎて、そのため人生が少し豊かではなくなり、寂しい生活を送っていて病気になってしまうケースがあります。
アルコールをたくさん飲んだら身体には良くないですよね。でも僕は、毎日飲んでいます。それは、僕の中では大切な人と交流して楽しい時間を過ごすことが、人生の中の大切な要素だからです。アルコールを飲みすぎることは良くないと分かっているけど、楽しい時間を過ごすために飲んでいるということです。でも、ただ飲んでいるだけだと身体を壊してしまうので、朝と昼の食事を含めて、全体で身体の調整をするなどの工夫はしています。
相談を受ける時は、その方がどんな人生を過ごしたいのかを伺ったうえで、それをするためにどうやったらいいのかなということを考えます。
そう考えるようになったきっかけはありましたか?
きっかけというよりは、まず僕自身ができるかどうかです。
医者の平均寿命って何歳かご存じですか? 医者の割合は男性が多いのですが、現代男性の平均寿命は80歳を超えてきています。でも、男性医者の平均寿命は73歳に届かないくらい。医者は本当に撫養生なんです。
みなさんが病院に行かれた時に、なかには「すごく健康そう!」と思う医者もいるかもしれませんが、すごく恰幅が良かったり、疲れていたり、健康そうではない医者のほうが多いと思います。ということもあり、まずは医者である僕自身が健康そう見えるようにしたいと思い、人生を健康に豊かに暮らすにはどうしたらいいのかということを考えるようになりました。
それまでは、健康のためにはアルコールはやめたほうがいいという考えがある中で、アルコールは百薬の長とも言いますし、1杯までなら問題ないと思っていたので、「1杯までならいいよ」と伝えていました。でも、「1杯でやめられるかな?」と自分で実践してみたんです。飲み会に行って1杯飲むと、やっぱり2杯目も飲みたくなるんですよね(笑)。「1杯までならいいですよ」と言いつつも、実際にはできない。できないことを勧めるよりは、その人自身がアルコールを楽しむためにはどうしたらいいのかなということを考えるようになり、もっと患者さんに寄り添えるようになりました。
よりひとりひとりにコミットした形で向き合えているということですね。
はい。その人が大切にしている人生があります。健康になる方法をいくら知っていても、健康になろうと思わなければ、行動に移すことはないですよね。思考が整ってはじめて行動が変わります。
例えば、甘いものをたくさん食べていたら糖尿病になります。そして、病院に行くと「甘いものをやめてください」と言われますが、それはみんな知っていることですよね。知っていても甘いものを食べてしまう。そこには、ダメだと分かっていてもしてしまう思考があるため、まずはそこを整えていく必要があります。僕の治療では、思考と心を整えることを重要視して行っています。
心を整えるという意味では、CBDもそうですよね。最初の段階では、自分で心を整えようと思っても不安定です。心の状態がフラットになった時に初めて自分のことをきちんとと考えることができるし、整えることができます。そういった状態を作るサポートをしてくれるCBDは、これからより大切になってくると思います。
医療現場におけるCBDの可能性については、どうお考えですか?
日本では法律や風土など、まだまだ難しいところがありますよね。ただ、僕が大切にしているのは、自分の身体を治療するのは誰がやっているのかということです。その責任者は自分自身ですよね。
つまり、自分でCBDの情報を得て、自分の責任で取り入れれば、治療に使うことができます。だけど、そういったことは医者の判断に任せるものだと思っている方が多いと思います。その思考は病気が治らない原因のひとつだと考えています。
そう考える理由は、医者は病気になったことを西洋医学的なやり方で治す方法は知っています。ただ、健康になる方法のことは知りません。だから、医者の平均寿命は短いんです。だから、自分自身で、自分自身の健康を整えるセルフケアがとても大切だということを、しっかり認識していただけると嬉しいです。
医者はいろんなことを知っているので健康寿命も長いのかと思っていましたが、そういうわけではないんですね。
はい。なぜ自信を持ってそう言えるかというと、10年前までの僕自身がそうだったからです。
病気を治す方法、健康寿命を長くする方法を知っているつもりで独立したんですけど、実はまったく知らなかった。当然CBDのことも知りませんでした。麻と聞いたら大麻だと思っていましたし、そう思っていた頃に『エリクシノール』のことを知っていたら、怪しいと思っていたと思います。
それから僕自身もCBDや麻のことを学び、使用していい部位が法律で定められていることなどを知っていきました。法律で守られている部分を商品化しているので、もちろん法律的には問題ないですし、いわゆる中毒性もありませんよね。正しい情報をきちんと知ることが大切だということも、外の世界に出てから分かりました。
がんをはじめ、長年、治療に向き合っている佐野先生でもそう思うことがあるんですね。
そうですね。ちなみに、がんになる人はどんな人かご存じですか?
心配性な人とか、遺伝も関係するのかなと思っています。
実は、一番大きいな理由は思考だということが分かってきたんです。人を許せない、怒り、そういった感情をずっと持っているかどうかが関係しているということです。
悔しいといった感情もですか?
いえ、悔しいというよりは怒りのほうです。つまりは穏やかに過ごすことが、健康にはすごく大事になってきます。
僕自身も、コロナ禍になってからは特に、自分自身が免疫力を下げてコロナに感染してしまうといろんな人に迷惑がかかるので、ストレスがかかっているものを外していく断捨離をしました。ストレスを断捨離することで自分自身の心が豊かに、幸せになります。加えて、ゆったり過ごすことも意識しています。
ストレスをリリースして思考を変えていくことが健康には大切なんですね。
はい。ただそこでもうひとつポイントがあります。余裕がない時は冷静な判断をすることが難しいと思うので、そういう時は信頼できる人に自分を診てもらうことも大切です。
診てもらうというのは具体的にはどういうことでしょうか?
カウンセリングでもいいと思います。自分が落ち着いている状態なら問題ないのですが、そうではない場合はきちんと診てもらう必要があります。僕自身も、身体は専門家に診てもらっています。やはり自分の身体のことは自分でよく分からないので、専門家にずれていないかどうかを診てもらい、整えてもらったりします。
心身を健全な状態に保つには、時間と労力、お金をかける必要があると考えています。でもみなさん、時間をかけたくない、運動もしたくない、お金も使いたくない、だけど健康にはなりたいって思いますよね。でもそれでは難しい。健康を保つためには、やるべきことをきちんやる必要があります。
僕もなかなか運動をする時間の確保ができていません。そのため歩くことを心掛けています。仕事に向かう時は歩いて移動するなど、生活の中で運動ができる状態を作っていくことも工夫していることのひとつです。
健康管理のひとつとして体重計があるかと思うのですが、佐野先生は乗っていますか?
乗っています。自分の中で体重のリミットを設けています。
食べることも、アルコールを飲むのも好きなので、気をつけないと体重が増えてしまいます。実は、今は少し増え気味です(笑)。なので、週末は食事を控えたり、ショートファスティングを行ったりします。
ショートファスティングとはどれくらいの日数ですか?
3日間くらいです。ドリンクだけではなく、味噌の汁や酵素を摂ることもあります。
ショートファスティングは方法のひとつですが、身体を休ませたり、整えたりと、メンテナンスはしてほしいと思います。例えば、車や自転車は定期的にメンテナンスをしますよね。でも、身体のメンテナンスはどうですか? 年齢分だけ働き続けている心と身体に感謝して、まずは休ませてあげて、メンテナンスをしっかりすることが大切です。
休ませる方法としては、どんなことをするのがいいですか? 夜にゆっくり湯船に浸かることもいいですか?
そうですね。僕は、瞑想の先生から「朝に40分、時間を取りなさい」と言われたことから朝にゆっくりとお風呂に入ったり、瞑想したりしています。「20分ではダメですか?」と聞いたら、「20分経ったところでようやく心と身体が整うので、味わう時間が必要です」と。でも、1時間だと続けにくいので、40分で実践しています。
その40分は何をする時間にしていますか?
何もせず、五感を使う時間として、ただゆっくりと過ごします。お風呂に入ることもそうですし、朝日を浴びながらゆっくりコーヒーを飲んで、その途中で瞑想をしたり。
その40分間は携帯に触ってはダメですよね……?ついつい触ってしまいそうです。
そうですね。デジタルデトックスはこれから意識することが大事です。
1日の間に携帯の画面を何回くらい見ていると思いますか? みなさんが思っている以上に見ているんですよね。仕事をしている時にふと携帯を見ると集中力が切れますよね。その動作はスタートダッシュを繰り返している感じで、それでは身体も脳も疲れてしまいます。
最近はマルチタスクと、複数の仕事を並列にできたほうがいいとされていますが、脳はマルチタスクに対応できていません。何かひとつのことに集中していると、他のことは考えられませんよね。マルチタスクではなく、集中する時は集中して、きちんと休むことが大事です。
どれくらいの間隔で休むのがいいのでしょうか?
学校の授業は、35~45分で行われていて、その時間は集中できると言われていますが、実は集中力が続くのは30分です。また、30分以上座っていると寿命が短くなることも分かっています。ということを踏まえて、30分に1回は休憩を取るのが理想です。
ということは、会社でのミーティングも30分で区切ったほうがいいですか?
30分程度で終わらせたほうがいいと思います。そんなに時間をかけて話し合わなくてはいけないことは、そう多くはないと思うんです。結局、終わりの時間がないと真剣に終わらせようともしませんよね。
ということは、30分で終わるように準備をしておくことも必要ですね。
はい。そうしないと脳が疲れてきます。脳を休ませてあげることが大事。もっと言うと、早めに休ませてあげたほうが元の状態に戻れます。集中して作業して、きちんと休むとことを繰り返しても作業効率が下がらないことは分かっています。
休むとは、具体的にどんなことをするのがいいですか?
分かりやすく言いますと、走っている時は足を動かしますが、休憩する時は足を止めていますよね。脳を休めせる時も同じで、止めるイメージです。30分仕事をしたら、トイレに行く、誰かと仕事以外の話をする、外の景色を眺めてみるといったことで、脳の休憩をするのがいいと思います。
それなら明日から実践できそうです!
ぜひ、実践してみてください。こういうことを知っているか、知らないかでは大きな違いなんですよね。本物の健康志向とは、健康の知識を持っている人のこと。知ったうえで、健康になるよう思考を整えていき、健康が保たれます。
佐野先生の著書を拝読した時にも思ったんですが、知識があるとこんなに安心できるのかと。知っておくメリットがすごくあると感じました。
そうですね。知っているだけでも全然違います。例えば、がんと診断されると、頭が真っ白になってしまうんです。そうなると何も考えられなくなり、がんについて調べようと思っても本を読む余裕もなくなってしまいます。
がんだけに限らず、病気になった時にどうすればいいのかということは、あらかじめ考えておくのがいいと思います。そして、病気になった時に信頼できる医者に診てもらえる仕組みは持っていてほしいです。
内科や外科など、分かれていると思うのですが、信頼できる医者を見つけるためにはどうすればいいですか?
全体的なことを診てもらえる人がいるといいと思います。がんなどの専門的な医者はたくさんいますが、全体のバランスを診ることができる人は多くありません。身体だけではなく、心も含めて、幅広い知識を持ったうえでバランスを診てくれる人がいると安心できます。
まずは、現状のかかりつけ医がどういう人で、どんな考えを持っているのかを知るところから始めてみてください。どんな医者なのかを知っておくと、余裕を持って付き合えます。
今日お話を伺って、佐野先生に診てもらいたいと思いました!
そう思っていただけるのはありがたいです。最近は個人医という形で相談を受けることが増えてきまし。やはりクリニック診療だと十分な時間を確保するのが難しいこともあるので、個人医というスタイルでしっかりと話を伺って対応させていただいています。
医者は、病気があって初めて仕事ができます。もちろん病気になった方を治療することは大切ではありますが、病気にならない、つまりは健康を作るところも医者の仕事だと思っています。
PROFILE
佐野正行さん
医師・森林医学医。
外科医として、国立がん研究センター中央病院、名古屋大学医学部附属病院などで、3000人以上の手術に携わり、がん治療、緩和医療を行う。2011年 (株)メディカル アンド ナレッジ カンパニーを創業し、医療相談専門医として活動を開始。食生活改善による健康指導や予防医療、免疫力をあげて未病に対応するなど、こころと体を潤し、「健康に、その人らしく、しあわせに過ごす」サポートを治療から健康相談まで総合的に行う。著書「最先端のがん免疫療法」は、紀伊國屋、丸善、八重洲ブックセンターなどでランキング1位。
http://dr-masa.com/prof/
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